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2022/05/23

音楽業界コラムvol.1 【音楽配信の多様化】

新型コロナが変えた音楽のライヴシーン。


その影響で、一気に加速し、多様化した音楽配信のスタイルは、VRの3D自由視点映像の臨場感をはじめ、シームレスなCG映像など、魅せる演出が花盛り。

未来に向け、仮想と現実が交錯する“メタバースライヴ”や“DX”など、新たな音楽の可能性が見えてきました。


新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい、わずかこの数年の間で何度も繰り返された“緊急事態宣言”や“まん延防止等重点措置”。不要不急の外出は制限され、人が集まる“密”な場所を避けるなどコロナ禍は、私たちの何気ない当たり前の暮らしに変化を与え、そしてライヴを中心としたさまざまな音楽シーンにも大きく変化をもたらしました。コロナ禍で大きな打撃を受ける一方で、最先端技術と結びついた新しい音楽の可能性を見出し、飛躍的な進化を遂げた音楽シーンは、意外にも、歴史的な一歩を踏み出したエポックメイキングな2年間ともいえます。そういう意味で、未来への可能性をはらんだ新しい音楽シーンの世界へといざなったのは、皮肉にもコロナ禍があったからなのかも知れません。


数多くのライヴが中止に。ライヴハウスも生き残りをかけた新しい取り組みを開始。


新型コロナウイルスの感染防止のための“密を避ける”対策は、とりわけ音楽ライヴなど、人の集まるイベントに、かつてないほどの大きなダメージを与えました。観客動員が必須ともいえる、ステージとファンが一体となって盛り上がるライヴ開催はできなくなり、海外からの受け入れをシャットアウトしていたため、外国人アーティスト公演も軒並み延期、もしくは中止に。
ライヴハウスも、ステージと客席がより近く、感染リスクが高いということで、長期的な休業を余儀なくされたのは、皆さんもご存知の通り。そこで、ライヴハウスが行なった最初の取り組みが、ライヴ配信です。当初は、無観客で開催するステージを固定カメラで撮影し、Youtubeなどで配信することからスタート。やがて、電子チケットを導入した有料のストリーミング配信や期間限定のアーカイブ閲覧など、徐々に新しい取り組みが誕生しはじめました。最近では、ライヴハウスのまとめサイトの誕生や映像機材を整えて新領域に挑戦したライヴの生配信、さらには投げ銭機能やSNSと連動し、ライヴ配信を通じてアーティストと交流を図るシステムの構築など、新しい取り組みがどんどん増えています。本来は、地域密着が主流のライヴハウスですが、まとめサイトなどを通じて遠くのライヴハウスの映像も視聴可能に。また、数台のカメラで撮影した映像を編集することで、ライヴ本来の臨場感の再現にも成功している事例もあります。驚くのは、何十年もそのスタイルを変えることなく続いてきたライヴハウスが、ここ数年の荒波の中で、新しい業態に進化しはじめていることに他なりません。


メジャーな音楽ライヴシーンは、テクノロジーと融合したものが急増。


著名なアーティストのライヴでは、最先端IT技術の導入が顕著です。時代トレンドを牽引する女性アーティストのライヴでは、通常の2D映像配信に加えて、VRによる3D自由視点映像、多視点からライヴの臨場感を体感できるマルチアングル映像配信など、5G時代ならではの楽しみ方を提案しています。また、先ごろ解散した人気グループのライヴ映画が公開。映画として公開する場合、何日かのライヴ映像を編集し、総集編として公開するのが一般的です。しかし、このライヴ映画では、映画を制作するために1日限りのライヴを開催。約5万人の観客から観える景色、ステージから見渡す光景を映像として残すために125台のカメラを持ち込み、会場全体の臨場感を映像で収めるとともに、第一線で活躍する映画監督が編集するという豪華な試みとなりました。
そして、今後の音楽ライヴの可能性を魅せてくれるのが、「メタバース」であり、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。どちらも、仮想とリアルが融合した世界観を持ちます。
「メタバース」は、ブランド名ではなく“仮想空間”の概念で、まだはっきりとした定義はありません。一例を挙げると、“渋谷区公認バーチャル渋谷”という「メタバース」では、渋谷の街をCGでリアルに再現、ネット上の“仮想空間”と現実社会とがリンクしており、自身のアバターでこの街に参加するのが基本です。この“仮想空間”内では、アーティストのアバターによるライヴ演奏や街角の大きなビジョンに実際のライヴ映像が映し出されるパブリックビューイングなど様々な楽しみ方があります。現実のライヴを仮想空間の中でそれぞれのアバターが歓声をあげながら見入る不思議な感覚です。
そして、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、元々、デジタル技術を活用したビジネス変革のキーワードなのですが、意外とエンタメ業界との相性も抜群。例えば、オンラインの無観客配信だからこそできる、歓客席まで活用したダイナミックな演出、SNSのライヴ配信と同時進行で双方向のチャット機能を活用した繋がる演出、オンラインゲーム内のVR仮想ライヴ空間でのライヴ映像の配信など、これらも全て仮想とリアルを融合した楽しみ方を示唆しています。
何より、このワクワク感があってこそのライヴ。この先、どんなIT技術と融合するのかを考えると、その大きな期待と興奮が止まるはずはありません。

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