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2022/05/23

音楽業界コラムvol.3【映像制作テクノロジー】

かつてない進化を遂げている映像技術。映画で繰り広げられる、見たこともないようなシーンの連続に、観客の心は踊ります。



しかし、編集ソフトを使えば、個人でもたやすく3DCG編集ができ、アイデア次第では、世界を凌駕することも可能。世界のMVが集まるYouTubeやTikTokはCG動画の教科書です。


映画の分野では、すでに実写とCGがシームレスに融合する仮想映像が、ひとつの潮流を創り上げています。最先端の技術を駆使したさまざまなジャンル映画が制作され、数万年後にこれらの映像が何の情報もなく断片的に発掘されたなら、とんでもない時代だったと勘違いされるに違いないとさえ思えるほど、精巧です。この精密な映像は、ゲームの世界でも同じことがいえます。CGキャラの動きの滑らかさに操作性が加わり、高度な映像美を体感できる時代です。そして今や、ゲーム映像の先端技術の波は、年を追うごとに高まり、コントローラーを持つ手にその場面に応じた振動が伝わって映像をよりリアルに仕上げるなど、実際にゲームの中で動き回っていると錯覚するほどの臨場感に魅了されます。
これらの技術を巧く取り込んで独自の世界観にまで昇華しているのが、ミュージックビデオの世界です。歌詞や音に込められた想いを感情豊かに魅せる、いわば映画のような、わずか5分前後のショートストーリー映像。また映像づくりによく使われるCGやエフェクトなどは、ゲーム画面さながらの技法が盛り込まれていることも少なくありません。かといって、従来通りのつくり方や抽象的な映像構成など、制限や枠組みがないのも、ミュージックビデオの魅力です。大切なのは、主役となる“音”なんですから。


新しい映像技術の起用が早い映画業界。最近はミュージックビデオ発信のアイデアも。


映像技術の進化を間近に体験しやすいのは、やはり映画の世界です。超高層ビルが倒壊したり、大きな宇宙船が都市に墜ちてきたり、時には何気ないいつもの風景なのに、背景がすべてCGという作品なども登場し、映像分野はさらに、日進月歩の勢いで加速し続けているのです。
こうした映像技術は、アーティストたちのミュージックビデオにも色濃く反映され、その影響を随所に見つけることができます。自身の“音づくり”と同じくらい、独自の世界観を映像に求めている著名なアーティストが数多く存在しているのも事実です。誰もが頭に思い描くミュージックビデオのひとつやふたつはあるはず。こうした流れは、連綿と受け継がれ、実にバラエティ豊かなミュージック映像を生み出しています。
そんな背景のなかで、今後期待されているのが、さまざまな映像をより高度に進化させる、デジタルテクノロジーの領域です。専用ゴーグルを装着し、現実の空間かと見紛うほどリアルな立体映像を観る“VR(仮想現実)”、スマホのARアプリを通して現実空間に映像や静止画を見せてくれる“AR(拡張現実)”、専用ゴーグルを装着し、空間に現れたパソコン画面を操作できたりする“MR(複合現実)”。ここに紹介したものは一部の使い方で、アイデア次第では、もっと幅広く活用される技術です。どれも現実と仮想を融合させて魅せる技術で、一部のミュージックビデオには、すでにこの技術が使われています。とくに現在、新しいライヴ配信への模索が続くなか、今まで誰も見たことがないような未知なる映像の可能性は広がっています。


多彩なミュージックビデオから学ぶ、最先端の映像制作技術。


日本のミュージックビデオは、世界と比較しても、多彩です。日本のお家芸ともいえるアニメと融合した作品だけでも、かなりの数に。もちろん、世界のミュージックビデオは、さまざまな視点や切り口で創られた映像の宝庫であることは間違いではなく、映像づくりのヒントがギュッと凝縮した参考書のようなものといえるでしょう。
そうした意味で、卓越したアイデアによって自分が持つ世界観を表現したいと考えるアーティストたちにとって、自分の“音”を最大限に引き出してくれる動画クリエーターやライヴ映像クリエーターの存在は、必要不可欠な存在です。“音づくり”に専念し、自分では編集しないとしても、その知識を持っているかどうかで、どんな映像を創り出したいのかを考える基礎が整っているということなのですから。作品づくりの熱い想いとは別に、冷静に見つめるプロデューサー的な視点が必要ということに他なりません。
ミュージックビデオ制作において、理屈抜きに楽しませてくれる作品や、ストーリー性のある映像に工夫が光る作品、クールでスタイリッシュな作品、音とシンプルな幾何学模様がシンクロする作品など、工夫次第では、予算をかけなくても、何らかの“創造の種”を見つけることができるはずです。技巧派とも言えるミュージックビデオをどれだけ目にするか、アーティストとして刺激を受けているか、才能を開花させるチャンスは、数多く散らばっています。
今後、デジタルテクノロジーの進化に沿うように、今までにない胸を躍らせてくれるさまざまな映像への期待は、日増しに高まっています。

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