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2025/04/17

音楽業界コラムvol.7【フィンガーピッキング ギターの世界】

ギターの奏法にはさまざまなスタイルがあります。その中でも、フィンガーピッキングは特に繊細で深みのある演奏方法です。ピック弾きとは異なる柔らかい音色と幅広い表現力が特徴で、クラシックやカントリーなどの音楽をルーツとしながら、若い世代のギタリストにも人気があります。


ギターのフィンガーピッキングでは、指先または爪を使って弦を弾きます。初心者の多くはピックで弾く練習から始めると思いますが、フィンガーピッキングはより細かい指の動きが求められ、各弦の音がバラつかないような正確さも必要です。そのため最初は難しく感じるかもしれませんが、これをマスターするとギターの表現力は圧倒的に広がります。

フィンガーピッキングの魅力は、まず第一に温かく太いサウンドが得られること。特に指先で弾いたときのしっとりした柔らかい音は、ピック弾きではなかなか得られません。ピックで演奏している最中に、部分的に指弾きへスイッチして音の表情を変えるテクニックも、色々なギタリストが使っています。

フィンガーピッキングのもう1つの魅力は、メロディーとハーモニーを同時に演奏できること。3本または4本の指を駆使して、低音弦でベース音を、高音弦でメロディとハーモニーを弾くことによって、より複雑なプレイが可能です。特にソロギターで効果を発揮するだけでなく、歌などの伴奏でも奥行きのあるバッキングを聴かせることができます。

元々クラシックやカントリーを起源とするフィンガーピッキングは、フォーク、ブルース、ジャズ、ボサノヴァなど様々なジャンルで発展しました。そうした背景からアコースティックギターで用いられることが多いですが、エレキギターでも活用できる自由度の高い奏法です。フィンガーピッキングを得意とするプレイヤーを「フィンガーピッカー」と呼ぶこともありますが、それは単なる呼び名ではなく、優れた技術や演奏表現に対する尊敬の気持ちも込められています。


国境や世代を超えて盛り上がっているフィンガーピッキングギターの人気

フィンガーピッキングギターの人気は世界中に広がっており、フィンガーピッキングギターをテーマにしたイベントが各地で行われています。特に有名なのが、アメリカで毎年開催されるコンテスト「インターナショナル・フィンガースタイル・ギター・チャンピオンシップ」です。前身となる大会を含めると50回以上を数える歴史あるコンテストで、優勝者の中からはグラミー賞アーティストも輩出されています。日本から挑戦するギタリストも多く、2010年には田中彬博、2023年には木村モモが優勝して大きなニュースになりました。

フィンガーピッキングギターのシーンはアジア圏でも盛り上がっています。中国では、「ワールド・アコースティック・ギター・フェスティバル(WAGF)」というソロギターのイベントが毎年開催。そこで行われるコンテストには世界各国のフィンガーピッカー達が参加し、腕を競っています。

日本では、2001年から行われている「モーリス・フィンガーピッキング・デイ」が有名です。プロミュージシャンによるライブと、アマチュアが参加するコンテストを2本柱とし、コンテストには地方予選を経て全国各地から強者たちが集まります。現在、フィンガーピッキングギターの名手として活躍するプレイヤーの中にも、このコンテストの入賞経験者が大勢います。

フィンガーピッキングギターを「学校で学ぶ」ことで得られるものは

近年はYouTubeやInstagramなどを通じて、フィンガーピッキングギターの演奏動画が世界中でシェアされています。それをきっかけに、フィンガーピッカーを志す若いギタリストも増えています。

こうした人達に向けて、YouTubeにはフィンガーピッキングギターのレクチャー動画が数多くアップされています。その多くは内容も充実しており、独学でフィンガーピッキングを身につけていくこともできるでしょう。ただ、それでは決して十分とは言えません。

先ほど述べたフィンガーピッキングギターの特徴を思い出してみてください。ピック弾きとは異なる温かく太い特有のサウンドは、ヘッドホンやスピーカーを通して100%伝え切ることはできません。目の前で奏でられるギターを自分の耳で聴いてこそ、本当のサウンドを知ることができます。複雑かつ正確な指の動きも、動画で観るのと実際に見るのでは、得られる情報量が大きく違います。

気軽に始めることができて、自分のペースで進められる手軽さではレクチャー動画に軍配が上がります。しかし、誰かに直接教わることのメリットは計り知れません。そのメリットを最も効果的に活かせる場所が「音楽学校」です。技術面だけでなく、フィンガーピッキングならではの表情豊かなギタープレイに必要とされる「センス」を磨く上でも、たくさんの音楽仲間と交流しながら学んでいける学校という環境は、大いにプラスになるでしょう。

神戸甲陽の卒業生にも、井草聖二、GIN、金藤大昴といったギタリストがフィンガーピッキングギターの分野で活躍しています。

このコラムを読んで興味を持った人の中から、彼らに続く次世代のフィンガーピッカーが生まれてくることを期待します。


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