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2023/04/24

音楽業界コラムvol.6【ジャズの楽しさ】

「ジャズ」と聞いて思い浮かべるイメージは何でしょうか。「大人の音楽」「オシャレ」「難しそう」……など色々あると思います。若い世代には、自分に縁のない音楽だと思っている人も多いかもしれません。でも、ジャズはミュージシャンを目指す人にとって大切なものがたくさん詰まった音楽なのです。


今年、アニメ映画化されて話題になった人気コミック『BLUE GIANT』の主人公・宮本 大は、中学を卒業する直前にライブハウスで初めて聴いたジャズの生演奏に心を打たれ、世界一のジャズプレイヤーを目指します。これは漫画の中の出来事ですが、15歳の若者がジャズに魅了されるのは、決してありえない話ではありません。実際、古今東西を問わず有名なジャズミュージシャンの多くは、十代の早い時期からジャズの演奏を始めています。そこには皆それぞれ、宮本少年と同じようにジャズとの鮮烈な出会いがあったに違いありません。「ジャズ=大人の音楽」というイメージがあるのは確かですが、ジャズを好きになるのに年齢は関係ないのです。

試しに、YouTubeやTikTokなどで「ジャズ」「JAZZ」をキーワードに検索し、出てきた動画から直感で選んだものを片っ端から観てみてください。BGMとして使っているものでも、生演奏の動画でも構いません。普段ジャズに接する機会のない人が、ここで少しでも面白そうだと思えたなら、ジャズへの入り口の扉は開いたと言っていいでしょう。


自分の感情をリアルタイムで音にする、それがジャズの醍醐味

世界一のジャズプレイヤーを目指した『BLUE GIANT』の宮本少年は、「世界一」とは具体的に何なんだ?とバンドメンバーに聞かれ、「自分のそのときの感情を音にできること」だと答えます。この「自分の感情を音にする」というのは、ジャズに限らずよく聞く言葉です。しかし、ジャズで「感情を音にする」ことは、J-POPやロックなどの音楽とは少し違います。そのことについて少し説明しましょう。

ジャズとそれ以外の音楽を分ける最も大きな違いは、「自由さ」にあります。と言っても、ジャズ以外の音楽が不自由だという意味ではありません。あくまでも音楽の形式の話です。一般的な「楽曲」では、メロディやコード、その他のフレーズ、リズムパターンといった要素があらかじめ決まっていて(作曲・編曲されていて)、ミュージシャンはその通りに演奏します。一方、そうした決まり事は最少限に留め、プレイヤーの解釈次第で自由に演奏する部分が多いのがジャズの特徴です。ほとんどの場合、原曲に沿って演奏するのはテーマとなるメロディくらいで、あとはアドリブやソロで展開していきます。場合によっては、テーマのメロディを崩すことも珍しくありません。

決められたメロディやフレーズに感情を込めて演奏することと、その場の感情に合わせて瞬間ごとに音を紡いでいくこと。どちらも「感情を音にする」という点では同じですが、やり方が違います。そして、必要とされる能力・技術も大きく異なります。


ジャズの「セッション」「アドリブ」は、音によるコミュニケーション

ジャズの演奏で多くの部分を占める「アドリブ」を、単なるその場の思いつきではなく、聴く人や共演者の心を震わせる演奏にするのが一流のジャズミュージシャンです。そうなるためには何が必要でしょうか。優れた演奏をたくさん聴いて、耳とセンスを磨くこと。思いついたフレーズを、イメージ通りに演奏できる表現力を身につけること。さらに、これらを結びつける能力……つまり、誰かと一緒に演奏する=「セッション」する中で、周りの音をよく聴き、そこからの演奏がより面白くなるようなフレーズを瞬時に発想して、音で表現すること。それをプレイヤー同士がお互いに交わし合うことで、素晴らしいジャズのアンサンブルが生まれます。

周りの音に素早く反応し、適切で自分らしい音を返すことができる。人間同士の会話・コミュニケーションとも重なるこの能力は、ジャズ以外のジャンルでも重要です。自分の感情を音にして、音と音で会話する。プロのミュージシャンとは、それができる人のことです。独りよがりのことしか話せなければ、会話の輪に入ることはできません。音によるコミュニケーションを通して、いろいろな人と豊かな関係を築けることが、ミュージシャンとしての実力に繋がります。


どんなジャンルのミュージシャンも、ジャズを学ぶ意味がある

音で会話する能力を磨くには、ジャズを学ぶのが効果的です。なぜなら、それ無しではジャズの演奏は成り立たないからです。有名アーティストの全国ツアーなどに帯同するサポートミュージシャンやスタジオミュージシャンは、多かれ少なかれジャズの知識や経験を持っています。それを独学で身に付けることは、かなり難しいでしょう。

神戸甲陽が、約40年間にわたって行っているジャズ教育では、プロミュージシャンによる指導の下で理論と実践の学びを重ね、「セッション」「アドリブ」の能力を磨いていきます。これは、数ある音楽専門学校の中でも突出した神戸甲陽ならではの強みです。普段はあまり感じる機会がないかもしれませんが、世界的に見るとジャズは今も進化・発展を続ける現在進行形の音楽であり、そこで輝かしい結果を出している神戸甲陽の卒業生は業界で多数活躍しています。

もし「ジャズは自分に縁のない音楽」と思っているとしたら、それはとても勿体ないことです。どんなジャンルでも、ミュージシャンを目指す人にとって、ジャズを学ぶ意味はとても大きいのです。

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