スペシャル対談
卒業生×在校生
SPECIAL INTERVIEW
路上ライブで鍛えた即興性溢れるサウンドが魅力のSuspended 4thで
ギター&ヴォーカルを務めるKazuki Washiyamaさん。
在校生たちのリアルな声に耳を傾けながら、
自身の経験談から貴重なアドバイスまで
終始フランクに話してくれました。
koyoに入って、聴く音楽のジャンルが広がった
知らない音楽に触れるのは面白いこと
- Washiyama
- 僕は10歳から津軽三味線をやっていて、師匠と一緒に人前で演奏するくらい本格的に取り組んでいました。ギターは中学生の頃から触ってはいたんですけど、ちゃんと始めたのは高校1年のとき。担任の先生がハードロック好きの若い先生で、その人の影響が結構大きかったんです。それでハードロックの曲をコピーしたり、作曲にも興味があったのでちょっとしたフレーズを作ってみたり。でも一番メインでやっていたのはドラムだったりして(笑)。そんな高校時代を過ごしながら、卒業したらもっと音楽をやりたいと思って、当時の甲陽音楽学院に入学しました。その頃はジャズに特化した学校というイメージがあって、硬派でストイックなところがいいなと思ったんです。皆さんの高校時代はどうでしたか?
- 川崎
- もともと両親が音楽好きで、私も小さい頃から家にあるCDやレコードをよく聴いていました。高校生の頃は主にJ-POPを聴いていたんですけど、生活の中心は中学からやっていたバスケットボールで、あとは学校の選択授業で声楽と理論の授業を取っていたくらい。ちゃんと音楽を勉強するのはkoyoで初心者から始めたみたいな形です。今はもっともっと勉強しなきゃと思っているところで、それまであまり知らなかった洋楽の曲も聴くようになりました。
- Washiyama
- 僕も、koyoに入ってから新しく知った音楽がたくさんありました。噛み砕くのは難しいけど、それがまた面白かったですね。
- 川崎
- 実は英語も結構得意だったので、外国語の大学に行くかkoyoに行くか迷ったんです。でも、英語は得意だけど「好き」とは違うなと思ったので、やっぱり好きなことをやりたいなと。
- Washiyama
- カッコいい!
- 山下
- 私は軽音部でギター&ヴォーカルをやっていて、マカロニえんぴつとかの邦楽ロックバンドをコピーしていました。でも、ギターを弾きながらだと歌うのに集中できなくて......。
- Washiyama
- うん、わかる(笑)。
- 山下
- ギターと歌だったら歌う方が好きなので、だったら歌を極めたいなと思って。進路はもともと別の進路を考えていたんですけど、高3の春に「やっぱり音楽やりたいな」って部活で話したら、バンドメンバーの女の子がkoyoで照明の勉強をしたいと思っていたらしくて、「ここなら音楽目指せるよ」と教えてくれたんです。「めっちゃいいやん!」って、秒で決断しました(笑)。
- 本田
- 僕は3歳からピアノを習っていて、ピアノ=クラシックというイメージがずっとあったんです。でも、YouTubeで上原ひろみさんの演奏を観て「ピアノってこういう使い方もあるんだ」と衝撃を受けて、即興演奏とかアレンジに興味を持つようになりました。koyoのことは高校2年生のとき、進路説明会にkoyoの人が来てくださって、そこでジャズに力を入れている学校だと知ったんです。自分も高校の終わり頃はジャズを勉強するようになっていて......。
- Washiyama
- koyoに入る準備を始めていたんだ。
- 本田
- 他の進路は考えていませんでした。でも動機は結構不純で、「ジャズを聴くのはカッコいい」みたいな。
- Washiyama
- 僕もそうだよ(笑)。
- 本田
- 高校は商業高校で音楽の授業もなかったし、周りはジャズどころか音楽が好きな人も全然いなくて、学校の外でインストのバンドを組んだりしていました。
- Washiyama
- いいね。そういう積極性を持ち続けてほしいな。
- 枡田
- 僕は小学校5年生のときにクラシックギターを始めて音楽に目覚め、中学は吹奏楽部で頑張っていました。高校では、小学生の頃から続けている作曲に没頭していたんですけど、あるとき、自分が好きで普段聴いている曲の多くを同じ人が作曲していることに気づいて「すごい!」と衝撃を受けたんです。PENGUIN RESEARCHっていうバンドの堀江晶太さんなんですけど、それで自分も作曲の道に進もうと決めました。
- Washiyama
- 僕も高校時代に作曲していて、もっと理論とかテクニカルなことを学んで手札を増やしたいと思っていたから、その気持ちはよくわかる。吹奏楽の方を極めたいというのはなかったの?
- 枡田
- 通っていたのが吹奏楽の強豪校で、毎日の過酷な練習にちょっと疲れてしまって、自分はなぜ音楽やっているんだろうって葛藤したり......でもちゃんと3年間やり切って、高校では新しいスタートを切ろうと。やっぱり音楽って楽しいなというのが根底にないといけないなと思ったんです。
- Washiyama
- うん、すごくしっかりした考え方だと思うな。
厳しいことを言ってもらえる環境は
成長していく上でとても大切
- Washiyama
- koyo在学中のことで特に思い出に残っているのは、いろんなパートの学生が集まるインプロヴィゼーションの授業で、確か2回目か3回目くらいのタイミングでいきなりリードシートを渡されて、ジャムセッションをすることに。でも当時は楽譜が全然読めなかったので手も足も出なくて、そこでガッツリ挫折したのが強烈な体験でした。自分は結構弾けるという自信を、ちゃんとへし折ってもらったというか。今思うと、そういう学校ってなかなかないと思うんです。そのときは周りにも同じように挫折した同期がいて、そこで一致団結したりして(笑)。そうして仲良くなった友人とは今でも連絡を取っているし、しっかり音楽で仕事をしている人もいる。そんな仲間ができたことも、すごく大きかったですね。
- 川崎
- 私はヴォーカルコースなので歌の授業がメインなんですけど、講師は現役のプロで活躍されている方ばかりなので、そういう人たちに自分の声や歌を聴いてもらって、意見やアドバイスをいただける今の環境はとても充実しています。もちろん、厳しいことを言われたりもするんですけど、だからこそ些細なことでも「なんだか良くなったね」って言われるとすごく嬉しいんです。それがモチベーションになるというか、もっと頑張ろうって思えます。
- Washiyama
- 厳しくするって、実はなかなかできないことだからね。そういうことをしてくれる人はすごく貴重だと思う。
- 山下
- 私は今までの人生で、ここまで音楽を好きっていう人が周りにいなかったんです。でも、koyoでは音楽が好きな人たちに囲まれた学校生活で、「こんな曲が好き」とか「こんな曲を練習してる」みたいなこともいっぱい話せて、とても充実しています。さっき川崎さんが言ったように、プロからアドバイスをいただけるのもすごくありがたいです。自分がどんな歌い方をしているのか、先生からの指摘で初めてわかることもたくさんあります。あと、学校主催のミュージカル「HospitalOFMiracle」にも参加していて、そこでは普段歌わないような曲を歌ったり、みんなで1つのものを作り上げていくのがすごく楽しいです。とても恵まれた環境だと思います。
- 本田
- 僕がkoyoに入って一番良かったと思うのは、業界や地域とのつながりがたくさんあって、いろいろな場所や施設での演奏経験を積めることです。イベントの大きなステージに立たせてもらえることもあって、こういう学校の生徒だからこそだなと思います。
- Washiyama
- イベントとかで、自分たちの演奏を聴きに来たわけじゃない人もいる中で演奏するのはなかなか大変だよね。学生のときにそういうことを経験できるのはとてもいいと思うな。
- 枡田
- 僕は高校時代まで、作曲や楽器のことを教えてくれる人が周りに誰もいなかったんです。だからkoyoに来て、わからないことを質問したら全部答えてもらえることにすごく感動して。自分から求めれば全力で相手してもらえるというか、中学から高校までの6年間に積み重ねてきたことが報われた気がしました。あと、僕はバークリーへの留学を考えているので、受験に必要というのもあってkoyoではベースを専攻しているんです。だから初心者みたいなものなんですけど、ここではちゃんと演奏する人として扱ってもらえて、アドバイスもいただけるので、自分が成長できる環境だなと思います。
- Washiyama
- 特に作曲をやっていると、演奏できる楽器は多い方がいいからね。あと、わからないことをどんどん質問するっていうのもすごく良いと思う。先生も嬉しいだろうし、こういう学生の方が教えがいがあるんじゃないかな。
学生時代は、自分に足りないものを探したり
人間性を磨いたりするのに絶好の期間
- Washiyama
- そもそも僕は専門学校に入るという時点で、もう働き始めなきゃと思っていたので、在学中からすでに作曲の仕事を取りまくっていたんです。ゲームアプリのBGMを作ったり、シンガーソングライターの人が作った曲を編曲したり。koyoで音楽を学んで、ちゃんと理論の裏付けがあるのは強みになると当時から思っていました。そんな自分の仕事に対して、同じ目線で意見を言ってくれる先生が学校の外にもいる、というニュアンスで捉えてもいましたね。いくら音楽が好きでも、それを仕事にすると辛くなると言う人もいるけど、僕は、そこに楽しさを感じられない人はこの仕事にあまり向いてないと思う。もし自分があまり興味のないジャンルの仕事が来たとしても、それを自分の「好き」に当てはめてみて少しでも重なるところを探したり、面白さを感じ取ったりできるのかということがすごく重要。プロとして仕事をするというのはそういうことだと思います。......ちょっと堅い話になったので(笑)、みなさんの将来の目標、夢を聞かせてもらってもいいですか?
- 川崎
- 自分の夢というか、憧れはMISIAさんです。まだ生のライブを観たことはないんですけど、一人のシンガーとして日本武道館とか東京ドームとかでライブできるのってすごいと思うし、自分もプロになって大きな会場でライブをしたり、ツアーしたりしてみたいです。
- 山下
- 私は今、絶賛悩み中なんですけど、卒業したらどこか事務所に所属して、音楽番組に出られるようなアーティストになるのが夢なので、そのための行動をこれからどんどんやっていこうと思っています。
- Washiyama
- 二人の話を聞いて、ひとつ安心してほしいなと思うのは、卒業してすぐに売れるというヴィジョンは描かなくてもいいよっていうこと。それよりも、自分に足りていないものを見つけて、一つ一つクリアしていくことの方が大事かな。koyoはそれを効率良くできる場所だと思うし、むしろ卒業した後の方が、自分にとっての課題を見つけられる環境を自分で探さなきゃいけない。僕自身もまだまだ日々精進というか、乗り越える壁を作る作業を今もずっと続けている感じです。
- 本田
- 僕は、好きなジャズを追求していきたいです。結果としてそれが仕事に繋がったら嬉しいですね。自分で演奏するだけじゃなくて人に教えることも好きなんですけど、僕はピアノを習っていた頃に先生と喧嘩して、ピアノが嫌いになった時期もあったりしたので、これから始める人にピアノを好きになってもらえるような活動もしていけたらいいなと思っています。
- Washiyama
- 自分以外の誰かのために、というのはすごくいいね。ちょっと話がズレるかもしれないけど、僕もプロデュースを含めたいろんな仕事をしていて思うのは、音楽を追求していくこと=仲間を増やすことだと思うんです。「人脈」っていうと堅苦しくなっちゃうけど、シンプルに誰かに好かれたり、呼んでもらえる人になることってすごく大事で。そのために最も手っ取り早いのは、めっちゃ陽キャになること。誰にでもフランクに話しかけるくらいの感じ。人間性と音楽は直接関係ないけど、だからこそそういう表面的な部分を磨くことも、koyoにいる間にやっておくといいんじゃないかな。
- 枡田
- 僕はkoyoを出たらバークリーに留学して、今とは全然違う生活が始まると思うんですけど、世界的に有名なアーティストをたくさん輩出してきた学校で自分がどこまでやれるのか、まずはそれを知りたいです。もちろん不安もあるんですけど、自分がまだ見たことのない世界がそこにあるというのは、すごくワクワクします。そこにちゃんと噛みついていけるようなガッツを、今はkoyoで養いたいと思っています。
- Washiyama
- 僕は歌を歌う人間なので、言葉の壁ってすごく大きいと感じているんです。単に英語を話せれば英語の歌を歌えるというわけじゃなくて、文化的な背景みたいなところまで理解していないと、海外で受ける音楽は作れないんじゃないかっていうイメージが自分の中にあって。だから今は、日本で身近な人が感動してくれる、等身大の音楽の方が尊いと思っています。その点、インストゥルメンタルは言葉が通じない人にも伝わるから、そういう部分では挑戦したいですね。とにかく一番大事なのは、自分が満足できる音楽を作れる状況を維持していくこと。どんな言葉を発しながら仕事をしているか、どういうポジションにいるかということも引っくるめて、音楽を続けていきたいんです。そして、それが身近な人に伝わるといいなと思っています。
PROFILE
1995年生まれ。10歳の頃より津軽三味線を三橋美智一氏に師事し、舞台での演奏も経験。中学時代にドラムとギターを始め、高校で本格的に音楽にのめり込む。同時期、作詞作曲やDTMにも手を伸ばす。その後、本校の前身である甲陽音楽学院名古屋校に入学し、ソングライティング科を専攻。卒業後は音楽クリエイターの事務所で作曲やアレンジの仕事を受けながら、2013年に結成したSuspended 4thの活動を続けて現在に至る。